事例研究

2026/01/30NEW
事業譲渡スキームにより病院統合を行った事例

【相談概要】
当法人(A法人)は、高齢化と人口減少が進む地方都市において、急性期病床中心の小規模病院(a病院)を開設している。地域医療構想をふまえ、公的補助金も充実しているので、非医療法人(B法人)が開設する近隣の病院(b病院)との統合を検討している。a病院は廃止してb病院を存続させ、A法人としてもその他の事業を整理した上で解散・清算したい。

【解決方法】
A法人は医療法人、B法人は非医療法人でした。医療法人と合併できるのは医療法人のみですので(医療法57条)、法人同士を合併するという方法をとることはできず、A法人がB法人に対し、a病院の事業を譲渡するという方法をとることになりました。

そうなると、A法人が雇用するa病院のスタッフは、病院統合によって当然にb病院(B法人)に移籍するのではなく、一人一人個別に、A法人との雇用関係を解消し、新たにB法人との雇用契約を締結してもらわなければなりません。病院統合を実のあるものにするためには、なるべく多くのスタッフに移籍に応じてもらう必要があります。

このときジレンマになったのは、病院統合計画をスタッフたちに告知するタイミングでした。あまり早いタイミングで告知すると、病院統合計画が外部に漏洩するなどして空中分解するリスクがあります。他方、統合実行間際に告知するのでは、スタッフたちが混乱し、移籍が円滑に進まなくなるおそれがあります。このジレンマの中で、A法人としては退職金の特別割増もするなどして、スタッフたちの理解を得られるように尽力しました。

こうした努力の甲斐もあって、最終的には、ほぼ全員のスタッフが移籍に応じてくれ、何とか病院統合にまで漕ぎつけました。行政や地域医療構想調整会議への対応、a病院の土地建物や医療機器の処分、公的補助金の受給など、他にも難しい課題はいくつかありましたが、やはりスタッフの移籍対応が剣ヶ峰であったように思われます。

【考察】
実は、スタッフの退職金については、当初はB法人側が負担する(正確には、B法人に移籍した後、A法人における勤続期間を通算する)という計画だったものの、B法人側の都合でその点は御破算になってしまいました。さらに、スタッフの退職金に関する公的補助金もあったのですが、行政の担当者交代により土壇場で見解の相違が生じ、当初の想定ほど受給することができませんでした。

この病院統合は地域医療への影響も大きかったので、その時点で後戻りすることは事実上許されず、A法人としては多大な負担をやむなく受け入れ、プロジェクトを進めざるをえなかったという経緯があります。

B法人や行政との間で、事前にもっと詰めた話ができなかったのか。そもそもスタッフの退職金問題が発生したのは事業譲渡スキームを採用したためであり、そうせざるをえない(法人合併スキームを採用できない)相手を統合先に選ぶしかなかったのか。現実はさまざま制約された状況の中で進行するので、教科書どおりにはいかないことのほうが多いのですが、課題の残る案件であったことは否めません。

(弁護士 山岸泰洋)

※実際の解決事例を素材としつつ、特定を避けるために編集・抽象化しております。

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