事例研究
2025/12/02NEW
不正を行った理事を退任させ、被害弁償をさせることにも成功した事例
【相談概要】
重要な事業部門を任せていた理事がその地位を悪用して法人資金を横領し、さらに複数の部下をハラスメントで隷属させ、横領の片棒を担がせている。
【解決方法】
まずは理事会を開催して職務停止・自宅待機とした上で、資金の動きや電子メールのログ等を徹底的に解析し、客観的証拠を揃えました。ハラスメントの被害者である部下に対しては十分なケアを行いつつ、理事の不正行為について証言を集めました。これらをふまえ、硬軟織り交ぜて追及と説得を重ねた結果、理事は不正行為を認めて辞任・退職するとともに、横領した法人資金を分割払いではあるものの全額返還することを約束しました。比較的迅速かつ穏便に解決したことにより、部下も退職などすることなく職場に復帰してくれました。
【考察】
率直にいって、この手の社内不祥事がここまできれいに解決することは多くありません。不正行為者を厳しく追及するだけで自白させることは難しく、匙加減を誤ると逆にハラスメント扱いされかねません。客観的証拠をいかに揃えられるかが肝要です。
他方、だからといって調査に時間をかけすぎると、証拠隠滅が行われたり、関係者の記憶が薄れたり、法人内全体として不正を追及する機運が衰えたり(これは地味に重要なことです。)して、事件解決への道は五里霧中に陥ります。
したがって、客観的証拠を迅速に収集して短期決戦に臨む、というのが模範解答になりますが、言うは易く行うは難しというのが実際のところです。筆者の経験でも、たとえばコロナ禍の最中は証拠収集が思うように進まず、結果的に事件解決が大幅に遷延してしまったことがあります。
(弁護士 山岸泰洋)
※実際の解決事例を素材としつつ、特定を避けるために編集・抽象化しております。
