事例研究
2025/12/02NEW
退職者による情報漏洩等を早期解決した事例
【相談概要】
介護職に対するパワハラなど問題行動の多かった看護師を配置転換したところ、退職し、逆に経営側の自身に対するパワハラ等を主張して慰謝料請求を行うとともに、地元医療関係者やマスコミに怪文書をばらまくなどして、営業秘密や個人情報を漏洩し、また、医療機関や理事長個人の信用・名誉を毀損している疑いがある。
【解決方法】
退職した看護師の主張にほとんど根拠はありませんでしたが、風評被害が急速に拡大し、患者さんや他の従業員に動揺が生じていたことから、早期解決を優先することになりました。弁護士が医療機関の代理人となり、硬軟織り交ぜた交渉を短期集中で行った結果、医療機関が退職金相当の解決金を支払う代わりに、退職者は持ち出した内部情報を全て返還・破棄し、今後同様の行為を一切行わないことを誓約するという内容の和解を、早期に成立させることができました。その上で、再発防止策として、ハラスメント防止のための院内研修、営業秘密・個人情報の管理体制の整備等の措置を講じました。
【考察】
近年、労働者を保護する法制度が急速に充実しており、そのこと自体はたいへん良いことなのですが、残念ながらそれを悪用・濫用する労働者も増えつつあります。営業秘密・個人情報の保護の必要性が高まる一方、それを漏洩する手法も発達し、非常に現代的な問題類型であるといえます。理屈どおりに正義を断行できればベストなのですが、場合によっては、地域医療や経営を守るために大局的な判断を迫られることも少なくありません。経営者に伴走する弁護士の手腕が問われるところです。
(弁護士 山岸泰洋)
※実際の解決事例を素材としつつ、特定を避けるために編集・抽象化しております。
