事例研究
2025/12/02NEW
勤務医の労働者としての権利主張を軟着陸させ、再発防止策を講じた事例
【相談概要】
勤続年数の長い勤務医が問題行動を多発させるようになったため、退職させようとしたところ、当該勤務医は労働者としての権利を主張し、任意の退職に応じないばかりか、高額の未払残業代の請求まで示唆してきた。
【解決方法】
この医療機関では勤務医について労働契約書を作成しておらず、就業規則も制定されていませんでした。そもそも勤務医は労働者として扱われておらず、残業代等は支給されない一方、特に問題の勤務医に対しては漫然と高額の年俸が支払われていました。このため、任意の退職を拒否する当該勤務医を一方的に解雇することは難しい状況でした。弁護士が医療機関の代理人となって粘り強く交渉した結果、一定額の和解金の支払を条件として、任意の退職に応じてもらうことができました。その上で、再発防止策として、勤務医についての労働契約・就業規則・退職金規程等を整備するなどの措置を講じました。
【考察】
勤務医が労働者に該当するか、労働法制の保護を受けるかについて、かつては議論がありましたが、現在では、よほど特殊な事情がない限り、この点を否定することは難しいと思われます。さらに、2024年からは勤務医の時間外労働に関する規制が強化され、医療機関経営者にとっては難しい時代となりました。トラブル発生後の対処はもとより、発生前の予防措置にも細心の注意を要するところです。
(弁護士 山岸泰洋)
※実際の解決事例を素材としつつ、特定を避けるために編集・抽象化しております。
